遺言は書いたほうがいい?

遺言を書くべきかどうか?

先日の記事で、認知症と遺言について書きました。そもそも、遺言は必要?というところを、今回はお話します。

最近は遺言キットなど、ちょっとしたブームになっています。お客様からは、資産家ではないのに、遺言というと、なんだか大げさな感じで気が引けちゃう・・というお声をいただいたことがあります。

確かに、仰々しいイメージもなくはないのですが、決して資産家だけが書くものではありません。当事務所のお客様では、相続税がかからない金額の方でも、お書きになった方がいらっしゃいます。

遺言は書くべき?というご質問を頂いたら、書くべき!というお答えをしています。

なぜか・・といいますと、適正な遺言がある場合、遺言は最優先されます。遺言がない場合、相続人で、お話合いを持ち、遺産分割協議をします。よく「相続は争族」などといいますが、それは分割協議に際して、私はこれじゃ少ないとか、この財産ジャナキャいやだということから、争いになってしまうケースが多いです。

遺言は最優先ですので、遺言がある場合、基本的には遺言に従って、分けることとなります。もちろん、相続人全員の合意があれば、遺言とは別の遺産の分け方をすることも可能です。

相続税基礎控除以下なのに、遺言を書いた事例

前述の相続税がかからない程度の資産であったにもかかわらず、遺言を書いた方のお話をします。

当事務所の所得税申告でのお客様で、所長が初めて会った時には、もう90歳になっていらっしゃいました。

家族の構成は、配偶者と子供一人。配偶者は、認知症が重く、入院していました。子供は、もう60を超えている年齢でしたが、連絡がつかない状態で、ほとんど絶縁状態でした。

申告のつど伺う度に、その方は、お子様の同じお話をされました。それは、居場所は分かっていて、連絡するけれど、電話しても出ないし、ピンポンしても応じない、なぜこんなことになるのか・・というある時、自分が死んだら、認知症の妻はどうなるのか?という内容でした。

そんなある年の2月、いつものように資料を拝見に伺うと、自分が死んだら、認知症の妻の生活はどうなるのか?自分の財産は妻にいくのか?というようなご質問を受けました。

「もちろん、配偶者にはいきますが、お子様にも権利がありますので、遺言がなければ、半分ずつ分けることになりますね」とお答えしたところ、しばらく考えていらして、「子供にはやりたくない。大半を妻に、若干を妻の面倒もよく見てくれる自分の妹に譲りたいから、遺言をしてみたい」と仰いました。

その時の預貯金は、3000万円弱。老人ホームに入居されていたので、不動産はすべて処分されていて、財産は預金だけでした。当時の基礎控除は、5000万円+1000万円×法定相続人(2名)なので、7000万円で、税金はかかりません。

ですが、どうしても音信不通になってしまった子供を許すことができないという思いが強く、遺言作成に至りました。

もちろん、お子様が遺留分請求を起こせば、まったく分けないという訳にはいきません。その点はご説明し、それでもできる限りのことはしたいということでした。

どうやって遺言するのか?

遺言の方法は、①自筆証書遺言 ②公正証書遺言という方法があります。

お勧めは、少し費用がかかりますが、②の公正証書遺言です。

遺言効果は同じですが、安全性に差があるからです。

公正証書遺言は、公証人役場に行って、公証人に作成してもらう方法です。弁護士さんや私のような税理士を介して依頼することも可能ですが、ご自身でお住まいの近くの公証人役場に行って、直接お願いすることもできます。

自筆証書遺言の安全性が少ない理由

自筆証書遺言は、なぜ安全性が少ないのでしょうか。

これは、証人がおらず、開封時には書いた方は亡くなっていますので、本当にご本人が書いたのかどうかが分からない可能性が大きく、また紛失したら、あとから改ざんされる可能性も大きいからです。

そのため、自筆の場合は、開封せずに家庭裁判所での検認という、本当にご本人が書いたのかどうかを改めてもらう手続きが必要となります。ちなみに、この検認を怠ると、5万円以下の過料となります。

公正証書遺言を書こう!

長くなりましたが、最後にマトメです。

財産の分け方を指定したいという場合は、自筆ではなく、公正証書遺言を作成しましょう!

遺言を書いてみたいけれど、どのようにしたらいいのかが分からない・・という方は、当事務所までお声掛けください。

前述の方は、数年前にお亡くなりになりましたが、遺言があったおかげで、無事ご本人の思い通りに財産を遺すことができました。とても、ダンディーで素敵な方でしたので、年1回織姫彦星のようにお会いするのを楽しみにしていたので、ここ数年はちょっとさびしい確定申告時期です。

 

 

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