認知症でも遺言書作成ができるのか?

認知症でも作成した遺言書は有効?

一時、遺言書がブームのようになり、書店でも自筆の遺言作成キットや関連書籍が棚に広く並んでいました。今も、書店によっては遺言関連のコーナーを見かけますね。
高齢化のいま、身近な方が認知症になることもありますね。それによって、遺言作成時にご本人が認知症であり、理解のないまま作成したのではないかと、遺言書の無効訴訟などもあるようです。

認知症 遺言書

遺言で最も重視されるのは、判断能力の有無

公正証書遺言を作成する場合、最も重視されることは、遺言者の判断能力があるのかどうかということです。内容よりも、「その内容でよいとする判断」を正常に持っているかどうかということになります。
そのため、認知症の方の場合、度合によりますが、遺言作成に十分とされる判断能力に欠けるとされることがあります。

仮に、判断能力に欠けるとされた場合、遺言作成はできません。また、遺言書が既に作成されていても、後々遺言作成時に判断能力が欠けていたとされれば、その遺言書は無効になります。

認知症では、絶対に無理なの?

認知症=判断能力がないということになりません。なぜならば、人によって症状の度合いは異なりますし、場合によっては、時々ピッと回路がつながるように、判断能力が正常な状態になるときもあります。

私の祖母もそうでした。ある時から数年、認知症的な症状がでて、暴れたり、猜疑心が出ることもあり、まわりの家族は悲しい思いをだいぶしました。ですが、ある時、それまで混線していた回路が、元通りになるかのように、突然元の(時には、キィッとなることもあり、負けん気いっぱいでしたが・・

それは元からなので・・)祖母に戻り、亡くなるまでずっと、以前に出ていたような認知症的病状はおさまっていたことを覚えています。
そのため、認知症と診断されたら、絶対に遺言作成ができない、というわけではありません。
ただし、すでに認知症の方の場合、「遺言作成能力がある」ということを証明することはとても難しく、裁判で争われたケースも多くあります。

判断能力の1つの基準

上述のように、判断能力を見極めることは非常に難しいので、公証人や弁護士の中には、「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」という簡単な質問形式のテストを行うこともあるようです。
この評価スケールは、インターネットの検索で「長谷川式簡易知能評価」などと入れると、実際の問題を掲載したサイトが多く出てきますので、不安な方は一度トライしてみてはいかがでしょうか。

みんなにとって、一番いい方法は?

遺言だけでなく、相続にかかる対策については全般としていえることですが、まだ若いからいいや・・と思わず、早いうちから、着手することです。
つまり、認知症になる前に、遺言作成をされることです。
遺言は一度書いても、変更したい場合、新しいものを作れば、最新のものが有効とされ、何度書いても問題はありません。

認知症になってから書いた遺言で、遺された家族が裁判で争うことは、遺言を作成しようと思ったお気持ちに反してしまうように思われます。