認知症の方の金融財産は、215兆円にも!?
皆さまは、平成30年8月26日の日経新聞朝刊の1面をご覧になりましたでしょうか。
8月26日は、日曜日でしたが、日曜の朝の1面にこんな衝撃的な記事が出ていたんです。
内容は、2030年には、認知症を患っている方が保有する金融財産が、現状の1.5倍の215兆円となり、家計金融資産全体の10%を超えるということでした。
このような金額になると、認知症によって預金からの引き出しが出来なくなる・・といった家族だけの問題ではなくなってきます。
団塊の世代がさらに年を重ね、高齢の方の持つ資産が消費や利用されず、銀行に眠ったままであれば、日本経済にも影響を与え、GDP減少にもつながってきますので、日本政府も危機感を強めているようです。
■眠った財産にしないためには、どうしたらいい?
記事の中では対策として、成年後見制度や、家族信託などの制度が出ていました。
成年後見制度?
1つ前の記事で書きましたように、成年後見制度は、判断能力が低下した方に代わって、その方の成年後見人が預金をおろしたり、何等かの契約を行ったりと、財産管理や処分をすることが出来る制度です。
現在は、この制度の利用者は約21万人となっていますが、実際の認知症の方の数からすると5%に満たない数だそうです。
後見人としては、親族の後見人や、職業として行っている後見人(私のような税理士、司法書士、弁護士など)がいます。
大変??
①成年後見人は財産額が大きいと、後見監督人が就き、数か月に1回収支状況を監督人に報告する必要があります。
ご家族が成年後見人になると、各種会計関連の書類を作成するのは、会計のプロではないため、かなり時間がかかるようです。
②時間を買うと言う意味で、職業後見人に依頼をすることになれば、報酬が発生しますので、費用的な負担がかかってきます。
でも、いい制度なの???
時間がかかる、若しくはお金がかかる・・ でも、使い勝手のいい制度であれば!!と思いますよね。
ある一面若しくは場合によっては、オレオレ詐欺に騙されることも回避できますし、収支もきちんと透明になりますので、安心の制度です。
ただ、相続対策ということでは、任意後見の間は問題がないのですが、認知症になり、成年後見開始されてしまうと、いい面ばかりではなくなります。
成年後見制度は、その方の財産をなるべく減らさないことが目的の1つであるため、相続税対策であっても、財産額が減ってしまう契約行為は、難しくなります。
この制度を使うのであれば、まだ元気なうちに、任意後見契約をしておき、その間に相続対策をします。認知症になる前までに、税対策や財産の承継対策を行っておき、認知症になってしまった後は、現状財産を減らさず、管理をキチンとしてもらうというようにすることが理想的です。
家族信託?
家族信託とは、信託の形式を利用して、自分の希望に沿った形で、財産を承継していくことが可能となる形式です。
信託銀行でも、○○信託などといった商品が発売されていますが、家族信託自体は、信託銀行を使わなくても、何をどうするかを決め、契約書を作成し、登記をすれば可能です。
確かにこの方式は、財産承継という点では、非常に優れたやり方なのですが、税金の面からすると、場合によってはメリットにならないケースも出てきます。
使う場合には、何を第1順位にするのか、その場合の税負担は何もしない場合と比して、増えるのか減るのか?などを理解することが必要です。それを分からずにやってしまうと、ご自身の亡くなった後、遺された方が多額の税金納付が必要となり、苦労することにもなりかねません。
結論として、どうしたらいい?
ここまでお読みいただくと、だったらどうするのがいいのよ!!!ということになりますよね。
一番いいのは、どういう制度を使うかを考えるのではなく、まず親世代の方が、相続問題を自分が死んだあとのことだから、今話題にしたくない、オレの前ではそんな話をするんじゃない!と言わずに、元気なうちに、どうしたいのか??を考えて、それを子世代・孫世代に表明しておくことです。
その中で、ご自身に適した方法としての選択肢が、後見人制度なのか、家族信託なのか、遺言ということになってきます。
先に、各種手法ありき・・ではありません。
だって、ご自身で築き上げてきた財産や、祖先から受け継がれてきた財産は、減らすことが無く、そのまま子供や孫に渡して、引き継いで欲しいとは思いませんか?
自分の子供や孫が、自分の遺したものが原因で、納税のためにお金を切り詰めて生活している姿を見たいですか?
場合によっては、どの財産が欲しい、ボクがもらったのは少ない、ワタシはあれだけ尽くしてきたのに、何もしなかったお兄ちゃんと同額は納得できない等々、大揉めにモメて、双方代理人を立てて、法廷でケンカしている姿を見たいですか?
そのようなことを想う方はいらっしゃらないはずです。
確かに自分の死後の話は気分のいいものではありません。でも、家族の幸せのため、ちょっとだけその気分には目をつむって、考えてみてはいかがでしょうか。
当事務所では、そんな想いをくみ取り、一緒に考えるお手伝いをしております。お気軽にお声がけください。