認知症になる前に・・・

認知症になってしまうと・・

平成30年8月26日の日経新聞の1面に、こんな記事が出ていました。

「80代の父親が認知症と診断され、老人ホームに入居している。父の入院治療費支払いのため、50代の息子が父名義の信用金庫の預金口座からお金を引き出そうとした。その時に、信金担当者から伝えられた言葉は、「ご本人の意思確認が出来ない状況では、預金からの引きだしは、難しいです。」

この記事をご覧になった方も多くいらっしゃると思いますが、どの様な感想をお持ちになられましたでしょうか。

問題になることは・・

認知症は、脳や身体に疾患が発生したことによって脳の働きが正常ではなくなり、記憶力や判断力などが低下して日常生活を送ることが困難になるという病気で、記憶障害が発生します。

認知症になった場合の問題は、身体的な問題もありますが、税務やその他でも大きな影響が出てきます。

その根底には、民法では、意思能力のない者がした法律行為は無効となることがあります。

そのため、医師の診断で、意思能力がない、若しくは低下しているといった結果となった場合、その方は法律行為が出来なくなったり、その前に行っていた法律行為も、自分の意思判断で行ったかどうかが分からないとして、無効になることもあります。

具体的には、日経新聞にあったような、預金口座からの現金引き出しや送金、その他贈与や遺言書作成、不動産やその他の売買契約をするといったことが挙げられます。

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実際に認知症で争ったケースも・・

当事務所のお客様でも、認知症に関連した事例がありました。

当事務所が相続税の申告を依頼された案件で、亡くなったお父様は遺言書を生前、弁護士立会いのもと、公正証書の形式で作成されていました。その内容は、長女に全てを遺すというものでした。

この方は、既に奥様が3年ほど前に他界されており、お亡くなりになる1年くらい前から認知症の症状が出ていました。

この方の子供は女性3人の三姉妹で、長女夫婦で、お父様と一緒に暮らして、面倒をみて、一緒に会社運営もされていました。財産も、預金や株式など金融財産が億単位でありました。

当然、次女三女も、お父様が相当な金額の財産をお持ちであることを知っていましたので、遺産についてはアテにしていました。それなのに、遺言を見たらビックリ、自分たちは何ももらえない!

そこで、次女と三女は、「父は認知症だった。この遺言は、認知症の人が書いたものなので、無効である」という訴訟を起こしました。

遺言は、亡くなる約2年半前に書かれたもので、作成直前に病院で認知症の診断テストを受けており、問題はないという判断がされていました。

その訴訟と共に、三姉妹の争いはエスカレートし、双方が子供の頃のことまで持ち出して、お互いを非難する状況に。

結果、裁判所では遺言は有効という判断がされ、次女と三女は遺留分減殺請求という最低限の財産取得を主張できる権利により、持分をもらえることになりました。

認知症のための対策は・・

当事務所は、相続税の申告を長女の方から依頼され、関与をしておりました。

上述のケースは、認知症の対策をしていなかったというケースではありません。ですが、もう少し次女や三女への配慮があったら、よかったのかもしれません。

このような争いを起こさない、または日経新聞にあったような預金からお金がおろせない・・ということが起こらないためには、どの様なことをしておけばいいのでしょうか。

1つには、成年後見制度を活用するということです。

成年後見制度は、まだ認知症になる前の意識がはっきりしている時点でも申請は可能です。家庭裁判所に請求をして、後見人をつけられるようにします。 その後後見が必要となった場合は、成年後見人が付けられます。

成年後見が始まると、ご本人、すなわち成年被後見人は、ご自身単独では法律行為はできなくなります。 例えば、認知症の方を言いくるめて、自分に都合のいい遺言書を書かせるとか、悪質な高額商品販売で何かを購入してしまっても、その行為は無効とすることができます。

成年後見には、法定後見と任意後見があります。法定後見の場合は、その方の財産保護が役目の一つになりますので、節税のためであっても、財産を減らすことは禁止されています。そして、任意後見はご本人が意思判断能力がないと、任意後見契約を締結することができません。

そのように考えると、相続の対策も兼ねる場合は、ご本人の意識のはっきりするうちに、任意後見を結んでおくと安心ですね。

当事務所でも、任意後見人へのご対応をしております。どんなことができるのか、ご自身の状況で上手く使えるのかな?などございましたら、お気軽にお声がけください。

 

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