「書面添付」を聞いたことがありますか?

昨日、事務所が所属しているTKC東・東京会というところで、他の東京の地域会と合同で主催された「相続税申告の取り組み方と書面添付 ~安心の相続を実現するために~」という研修を受講しました。

この研修では、相続税の申告書に書面添付なるものを付けることが重要というお話から、実際に講師の先生が相続税調査を受けた時のお話や、全ての申告に「書面添付」を実行してから調査がほとんどないというお話、具体的な記載のポイントなどをとても分かりやすく説明していただき、早速当事務所でも今回教えて頂いたことを実務に活かしていこうと意気込んで帰ってきました。

ということで、本日のお題は、相続税申告と書面添付です。

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書面添付とは?

税理士が、なぜそのような申告金額になったのかということについて説明した書面を、相続税などの申告書に付けて、税務署に申告書を提出すること」を言います。

この説明書面は、税理士法33条の2に定められた書面で、この制度は税理士法が規定しているものです。

この書面が添付されている場合、いきなり税務調査に来るということはありません。 

税務署が、ちょっと調査して聞きたいことがあるだけれどなぁというときは、まず税理士が税務署に呼ばれます。そこで、その申告についての質問を、税理士が受け、回答します。その場で回答ができない内容であれば、後日回答し、また参考資料を税務署に提出することもあります。そのやり取りの中で、「なるほどね!」と税務署が納得すれば、調査は行われません。

相続税の調査の現状は?

調査件数

上記は、平成25事務年度における相続税の申告数と、調査の件数等の表です。どのような事が分かるでしょうか。

「税額ある申告の調査割合」欄からは、税額が発生した申告について、2割程度が調査を受けていることが分かります。 さらに、税額ある申告で調査を受けると、「調査件数における申告漏れ指摘割合」欄から、8割が何等かの申告漏れを指摘されていることが分かります。税額が発生した申告書を出して、調査があると、8割が申告もれを指摘され、申告が漏れているということは、言い換えると税額が不足しているということになり、追加で納税しているということが言えます。大ざっぱですが、調査があると、金額の過多はともかく、大半が追加で納税しなければいけなくなるということになります。

書面添付がついていると、どうだろう?

今度は、書面添付についての数値のアレコレです。

書面添付件数

まず、書面添付の件数が5,453件、申告件数は68,785件ですので、7.9%しか付けられていません。少ないですね。

書面添付がされている申告のうち、実地調査に至った件数は482件で、8.8%です。この先、書面添付をした申告についての申告漏れ指摘件数は公表がありませんので、定かではありませんが、仮に前述の「調査件数における申告漏れ割合」の82.4%を使ったとすると、8.8%×82.4%から、書面添付がされている申告では、申告漏れが指摘される割合は7.2%と出ます。(これは、あくまで前述仮定においてです)

これをご覧になると、書面添付されていれば、調査移行も少なく、申告漏れ指摘も少なくなることがお分かりになるのではないでしょうか。 

このように、書面添付は大きな効力があり、相続人の方々は、税理士に付けてくださいと依頼すべき書面なのです。 

効力の大きい書面添付が少ないのは何故?

書面添付は、税理士にとっては税理士法が与えてくれた権利です。ですが、その一方で、税理士法は、税理士が書面添付に虚偽記載をした場合に罰則を科しています。

また、この書面添付は、何も記載せずに、税理士法33条の2の書面というものをポイッと付けておけばいいというものではありません。各種相続人の方からお預かりした書類から自分が確認をした内容や、相続人の方々とお話をした内容やご相談を受けた内容、それに対して自分がどのように答えたか、アドバイスをしたのかということを、詳細に書かなければなりません。通常の申告書に加え、さらに時間をかけて考えて作成する書類が増えることになります。

そのため、書面添付を申告書のほかに作成するなんて、メンドクサイ。適当にチョッチョッと書きたいけれど、「チョチョ」がいい加減で間違ったことであると罰せられてしまうのであれば、書かなくていいじゃん・・となる人も出てくるという訳です。 (そもそも、チョチョと時間をかけずに記載しようとする考え方が間違っています)

当事務所の相続税書面添付への方針は?

当事務所では、これまで相続人の方から委託を頂き、税務署に提出した申告書には、すべて書面添付を付けております。

「書面添付は、自分が確認をしたこと、なぜ申告書に記載した内容となったのかの根拠や自分の考えたことを書けばよいのだ」という考えから、相続税全件書面添付を方針としています。 そのうえでもし、税務署が申告内容で疑問に思ったことがあれば、穏やかにきちんとこちらの考えをお伝えし、もし解釈の相違があれば、双方が事実に基づいて再度検討し、解決を探っていけばよいのだとも考えています。

相続税の書面添付、どのようなものなのか・・もっと深くお知りになりたいという相続人の方がいらっしゃいましたら、是非お声掛けください。

 

 

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