遺産分割協議にも期限が!?
平成30年9月29日の日経新聞の夕刊1面に、「遺産分割協議 期限10年に」という見出しの記事が出ていました。
この記事によると、遺産分割を話し合いで決める期限をお亡くなりになった日から10年間と決めることを、法務省が検討に入り、再来年の通常国会で改正案を提出する予定とのこと。
現状は?
では、現状はどうなっているの?と思われる方も多いと思います。
現状は、特に遺産分割の期限は決められていません。よって、決まらなければ20年でも30年でも話し合っていいということに、法律上はなっています。
ですが、お亡くなりになってからある程度の期間(例えば、相続税の申告期限である10か月以内)に決まらないものは、大抵のケースは何十年経っても決まらない・・ということが多いようです。
制度案は?
遺産分割の期限を、10年と限定することになるようです。
10年経っても遺産分割が決まらない場合は、法律に従い、自動的に権利確定となるようです。恐らく、この権利は、民法の規定により、配偶者1/2、子供1/2などとなるでしょう。
制度案のメリットは?
未分割が長く続き、当時を知る人が段々少なくなってしまうような場合、いったい正式な権利者が誰であるのかが?が不透明になってきます。
例えば、亡くなったおばあちゃんの家があった不動産をいざ売ろう!となっても、不動産の権利者がおばあちゃんのままで、誰が相続をするのか?が決まっていなければ、売却することはできません。なぜなら、誰の所有であるのかが分からないので、売り主が特定できない・・からです。
このようなことが起こらないように、ある程度経ったら権利関係を法律に則り、決めることで、眠っている財産が流通したり、有効活用が可能となります。
デメリットはないの?
では、亡くなってから10年経って、法律で決めた割合で権利を確定させてしまうことについて、デメリットはないのでしょうか。
残念ながら、デメリットも考えられます。
例えば、不動産で考えてみましょう。お母さんが亡くなって、子供が4人いたとします。お母さんが住んでいたマイホームは全部お母さん名義でした。
上記の例で、10年経っても誰がもらうか・・という話し合いがつかなかったら、民法の相続分で自動的に分けると言う法改正となった場合、1/4ずつ子供たちが所有権を相続することになります。また、場合によっては子供が既に亡くなっていれば、孫が相続します。
このようなやり方だと、下の世代に行くにつれ、少しずつの割合でかなりの数の人が、おばあちゃんのマイホームの所有権を持つことになります。
このマイホームを売ろうとする場合、現状では売り主(=所有者)全員の同意がなければ、売却は出来ないので、全員から承諾を取らなければなりません。みんながスンナリ許可してくれれば、多少の手間で済みますが、嫌だ!!とゴネル人が出てくれば、売却できなくなってしまいます。
デメリットに対する政府案
法務省もこのようなことは懸念があるようで、日経新聞の記事では、下記のような対策を法務省が考えているとの記載がありました。
複数の人が所有している不動産を第三者が借りたり、買ったりしやすい仕組みをつくる。
具体的には、共有者の過半数が集まれば、代表窓口としての管理権者を置いて、取引ができるようになる。
まだ早期案の段階なので、これで本当に可能なのか? 少数共有者の権利を損ねないのか?そこからまた新たなもめ事が起きないのか?など、考えることはあるように思いますが、昨今の空き家問題などとも絡んでくるので、諸問題が解決するような改正になることを期待しています。