未収家賃は誰が相続?

遺言書に未収家賃の記載がない場合は、誰が相続?

 マンション

 

 

 

遺言を作成されている方の中には、アパートやマンションをお持ちの方も沢山いらっしゃると思います。
そんな方に質問です。
未収家賃が生じた場合、誰に相続させるのかを遺言書で指定していますか? 

アパートやマンションを建てる際に、金融機関からの借入がある方もいらっしゃると思いますが、借入も同じです。

とある遺言書・・・

ここで、1つ事例を見てみましょう。
夫はサラリーマンでしたが、親が地主であったので、相続した不動産がいくつかあり、その土地を利用して、賃貸用不動産(マンション)を3つ持っていました。
サラリーマンでしたので、預貯金が何億もあるわけではなく、マンション建替えの際には、金融機関から借入をしていました。直近では3年前に、老朽化したマンションの建替えを行い、5千万円程度の借入をしました。一番古いマンションは、家賃も近隣に比べ安く、比較的収入の低い人が入居していたため、家賃の滞納もかなりありましたので、近く建替えをしようと考えていたようですが、実行されることなく、亡くなってしまいました。

家族構成は、妻と子供2人。

その他財産は、預貯金が3千万円程度と、自宅です。

夫は、遺言書を下記のような遺言を作成していました。
1)自宅と、預貯金は妻に。
2)賃貸用不動産は、評価で同じになるように、長男に1棟、二男に2棟(老朽化しているものを含む)。
3)その他、遺言書に記載がない財産や負債がある場合は妻に。

この遺言書の欠点

上記の遺言は、子供2人が同等になるように配慮もされていて、妻が自分が亡くなった後も、生活に困らないように、預貯金を遺していて、一見すると、とてもよく出来ている遺言書のように見えます。

ですが、2つ漏れています。漏れている点は、どこかすぐ閃きましたでしょうか?

1つは、未収家賃をだれがもらうか。2つめは、建替えの際の借入金は誰が負担するのか。です。  

未収家賃をもらう権利は、二男? 妻?

まず1つめの問題点から。

遺言書では、未収家賃についての記載がありません。そうなりますと、遺言書の3)欄に従い、記載がない財産であるため、妻が相続することになります。

滞納で未収家賃が生じている賃貸用不動産の土地と建物は、二男が相続します。ですが、そこから発生している未収家賃については、妻が相続することになってしまいます。

これは、おかしいですよね?
普通に考えれば、その賃貸用不動産から生じた未収家賃は、その賃貸用不動産をもらった人が、併せて相続するのがスムーズです。

借入だけ、妻が??

そして、2つ目の問題点です。

賃貸用不動産にかかる借入については、遺言書で誰が引き継ぐのかの記載がされていません。
そして、遺言書に記載のない負債は、妻が承継するように書かれています。

そうしますと、賃貸用不動産にかかる借入は、妻が引き継ぎ、金融機関に返済していかなければならないことになります。
妻が、自分の固有財産(夫から相続したものでない財産)で、例えば1億円・2億円の預貯金でもあれば、返済だけしていくということも可能でしょう、しかし、通常そのようなことはないケースが多いです。
そのような場合、妻は金融機関に返済はできなくなってしまいます。

普通は、金融機関の借入は、借りて建てた賃貸物件の収入の一部を回すことを想定しており、賃貸物件・そこから発生する収入と、借入は紐づいているべきです。

どこがいけなかった?

未収家賃や借入金といった細かいところまで指定されておらず、やや大ざっぱな指定の仕方であったことが問題でした。

気を付けておくべき点は、賃貸用不動産であれば、預り敷金や、火災保険の契約などがあります。

よって、遺言書を書く場合、お持ちの財産から派生して考えられる財産・債務についても、細かく洗い出して、遺言書に含めることが必要です。細かく指定されていない場合、遺言があっても、分割協議が必要になるなど、遺言の効果がなくなってしまうこともあります。

遺言を考えている方で、ご自身の財産について、派生される内容がないかどうか・・などが心配というかたは、一度お気軽にご相談ください。

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